住宅の劣化の原因の1つが雨水の侵入による雨漏りです。
外壁塗装には防水機能があり、建物の内部に雨水が侵入するのを防ぐ役割があります。
特にひび割れが起こりやすいモルタルでは弾性塗料による防水塗装を行うことでひび割れや水の侵入を防ぐこと可能です。
この記事では外壁の防水塗装に使う弾性塗料について解説します。
防水塗装とは
防水塗装は通常の塗料よりも高い耐水性のある塗料を使用して建物への水の侵入を防ぐための塗装です。
防水塗装に使う防水塗料は大きく「壁用」と「床用」の2種類があります。
壁用の塗料はモルタルやコンクリートなどのひび割れを起こしやすい外壁の防水効果を高めるために塗る塗料で、主に「弾性塗料」を指します。
床用の塗料はベランダや屋上など、屋外の平らな床面の防水に使われる塗料で、「トップコート」とも呼ばれます。
弾性塗料の定義
弾性塗料には「高弾性塗料」と「微弾性塗料」があります。
・高弾性塗料…20度で120%以上伸びる塗料
・微弾性塗料…20度で100%以下の伸び率の塗料
高弾性塗料は3~5年の弾性効果がありますが、微弾性塗料は1~3年程度しか弾性効果がありませんので注意が必要です。
防水塗料(弾性塗料)のメリット
塗膜が柔らかくて伸びが良くひび割れに強い
弾性塗料は塗膜が柔らかく、ゴムのように伸縮性があるため、下地のコンクリートがひび割れを起こした場合でも、塗料の弾力性で塗膜のひび割れを防止する力が働きます。
モルタルは車が付近を通過したり、地震で揺れが起こったり、寒暖差で下地が伸縮した場合にひび割れを起こしやすいですが、弾性塗料を使用することでひび割れが起こりにくくなります。
防水性が高くなる
弾性塗料は外壁に密着しやすい性格を持っており、その密着力によって建物の防水機能を高めることが可能です。
さらに、弾性塗料は塗膜が厚くなりますので、防水層が厚く雨に強い外壁となります。
ひび割れが起こりにくい点も雨水の侵入を防ぎ、高い防水機能を維持できる大きなメリットと言えるでしょう。
防水塗料(弾性塗料)のデメリット
耐用年数が短い
弾性塗料の最大のデメリットは耐用年数が短い点です。
弾性塗料は工法によって耐久性が異なるものの、耐用年数はおよそ5年と外壁塗料としては寿命が短いと言えます。
耐久性の高い工法で施工すると施工費用が高くなり、耐久性の低い工法で施工するとメンテナンスの頻度が高くなって結果的にコストが掛かるという結果になってしまいます。
サイディングボードでは使用できない
弾性塗料はどんな外壁材でも使用できるわけではありません。
代表的なものとして、サイディング外壁には弾性塗料は使用できません。
理由はサイディングボードの断熱性にあります。
サイディングボードは内部に断熱材が含まれており、夏には表面温度が約80度近い高温になります。
サイディングボードが高温になると弾性塗料が柔らかくなりすぎてしまい、塗膜に膨れなどの劣化が起こってしまいます。
防水塗料に適している外壁材
モルタル
モルタル壁はひび割れを起こしやすいという特徴を持っています。
防水性が低いため、防水機能の高い段性塗料で塗装しておけばひび割れが発生した場合でも塗膜にひびが入りにくく雨水の侵入を防ぐことができます。
コンクリート
コンクリートは防水性が低く劣化すると表面が剥がれ落ちたり雨水が内部に侵入して鉄筋が錆びてしまうこともあります。
防水性の高い塗料で保護することで耐久性を保つことが可能です。
サイディングボードの防水にはフッ素塗料がおすすめ
上で弾性塗料はサイディングボードには向いていない旨ご紹介しましたが、サイディングボードは元々ひび割れを起こしにくい素材のため、ヒビ割れ対策はあまり必要ではありません。
サイディング外壁はボードの継ぎ目にコーキング材による目地があり、コーキング材が建物への衝撃を吸収します。
また、サイディングの塗装ではシリコン塗料を始めとした塗料を定期的に塗り直すリフォームを行っていれば防水性は問題ありません。
しかし、とくに防水性を高めたいという場合には、フッ素塗料を選ぶと良いでしょう。
フッ素塗料は塗料の主成分の樹脂にフッ素が含まれている塗料です。
耐水性が高く水の侵入を防ぐだけでなく、親水性もあり、汚れが付着しても雨が降ると塗膜の表面に水が広がって汚れを洗い流す機能があります。
外壁としっかり密着し耐久性も高いため、長期間防水機能を保つことが可能です。
弾性塗料の工法
弾性塗料には3種類の工法があります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、1つずつ特徴を見ていきましょう。
単層弾性仕上げ
単層弾性仕上げは一般住宅向けの工法で、3回塗りで仕上げる工法です。
下塗り材を塗った上に弾性塗料を2回塗りしてひび割れを防ぎます。
工程が少なく、上塗り材2回は同じ塗料を重ね塗りすることになるため、次にご紹介する複層弾性仕上げより安価に施工することが可能です。
複層弾性仕上げ
複層弾性仕上げはビルやマンションの屋上やベランダなど大型物件向けの工法で、5回塗りで厚みを出す工法です。
下塗りの上に弾性塗料を中塗りとして2回塗り、さらに上塗り材を2回塗りします。
塗膜に厚みが出るため防水性が非常に高くなる点がメリットです。
ただし、作業工程が多いため、材料費、人件費共にコストのかかる工法です。
微弾性仕上げ
微弾性仕上げは現在ひび割れが起こっている一般住宅向けの工法です。
微弾性フィラーという下塗り材を使い、上塗り材を2回塗りで重ねて計3回塗りで仕上げる工法です。
下塗り材でひび割れを埋めて補修の役割をします。
工程も少なく、上塗り塗料は通常の塗料を塗るため、費用は通常の外壁塗装と同程度で施工が可能です。
また、上塗り材のグレードや種類は豊富な種類から選ぶことができます。
デメリットは微弾性塗料は伸び率50~90%のものが多いこと、複層弾性仕上げに比べると防水性が劣ることです。
定期的な塗り替え工事が必要
外壁の防水機能を高める弾性塗料について解説しました。
外壁の防水性を高めるためには塗料選びも重要ですが、定期的な塗り替えメンテナンスも重要です。
屋根と外壁は定期的な外壁塗装をあらかじめ計画しておきましょう。